汗ばむような陽気にうんざりしながらも沙都子は待ち合わせの場所へと急いだ。

 

階段を急いで駆け上がるとそこには人影が一つ――

 

言わずとも梨花であることは確かだった。

 

何故って、彼女を呼び出したのは沙都子自身だったから――

 

沙都子には梨花が太陽よりも輝いているように思えた。

 

少しだけ動機が乱れるのを感じ、沙都子は大きく息を吸う。

 

心なしが顔が火照っているような気がする。

 

熱い・・・・意識すればするほど熱くなっていく。

 

「もぅ、来ていたんですの?まだ、約束の時間まで20分もありましてよ、梨花」

 

からかうかのように沙都子は梨花に向かって言う。

 

顔は火照ったままであったが、「赤い」と言われた時は誤魔化せばいいのだ――

 

「みぃ、沙都子のためだったらボクは何時間も待つのですよ?あと、早起きもしちゃうのです」と梨花はいつものような笑顔で沙都子にそう告げるのだった。

 

「そ、そんな事言っても何もでないのですわっ、梨花!!」 予想外の返答にあたふたしている沙都子に追い打ちをかけるがごとく、 梨花は120%の笑顔で言い切る。

 

「みぃ〜沙都子がいるだけでボクは充分なのですよ☆ところで、どうしてボクをここに呼び出したのですか?」と梨花は首を傾げながら沙都子に聞く。

 

「うっ・・・た、たまには外で梨花と遊ぶのもいっ、いいと思っただけでございますのよ!!別に意味なんてないのですわっ!!」 梨花の奇襲攻撃に耐えかねた沙都子は爆発したかのように早口でまくし立てる。

 

「みぃ?お顔が真っ赤なのですよ?」

「うっ、五月蝿いのですわ・・・ほっといて下さいまし!」

 

散々、からかわれた沙都子は梨花の方を見ようとせず、無言で歩き出した。

 

梨花は置いていかれないように沙都子の後ろをゆっくり、付いて行く。沙都子の頬から汗が涙のように伝っていくのが梨花には見えた。

 

二人は暫くの間、無言だったが、梨花の呼びかけによって沈黙は破られるのだった。振り返った沙都子の頬を梨花は真顔で触れる。