声をかけてやろうと思った。
また、いつものようにからかってやろうと思ってた。
だけど、アイツの隣には鴇羽がいてあたしの姿なんて、見えていないようだった。
嬉しそうに鴇羽に話しかける様子が遠めでも解る。
鴇羽は半ば呆れながらも命の話を聞いているようだった。
何も変らない、いつもの様子。
なのに、心が痛い。
アイツの一番は鴇羽だって知ってるのに・・・・・
それでも、少しだけその場に留まっていたのは多分、気がついて欲しかったから。
本当は傘のせいで、解らなかったのかもしれない。
無意識に傘で、顔を隠していたのかもしれない。
なんたって、今日はどしゃ降りだったから。
だけど・・・・・・
雨がうるさいほどあたしの傘に当たり、あたしの思考を邪魔するのだった。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・あほくさ。
なんで、あたしが・・・・・
あたしは溜息を吐き、踵を返す。
ふと、我に返れば、服も靴もびしょ濡れだった。
生暖かい雨が逆に気持ち悪い。
尚且つ、髪にいたっては頬に張り付いてしまっている。
そして、ポタポタとあたしの髪から滴り落ち続けているのだった。
そう、うっとおしいくらいに。
はぁ・・・・・最悪。
近くのコンビニまでと高をくくっていたせいで、あたしは上着を着ていなかった。
あーあ・・・風邪、引いたら・・アイツのせいだわなんて悪態を付きながらもあたしはそっと振り返るのだった。
これ以上、この場に留まっていることはもう、意味の無いことだと解っていたのにあたしは気になって仕方が無かった。
だけど・・・・アイツと鴇羽の姿はもう、何処にも無かった。
「っ・・・・ばっかじゃない・・・」
無意識に呟いた言葉はどう足掻いたって命に届かない。
そう思うと少しだけ雨に濡れたくなった。
To be continued.