貴女が大切だから
どんな事だって気づいてあげたい――
「九ちゃん、さっきから指を気にしてるみたいだけど・・・どうかしたの?」
「え・・・えーと・・・・な、何でもないよ!!」
彼女は焦りながら、必死で手を隠す。
なんだか、怪しい・・・・・
「いいから、ちょっと、見せてみなさい」
口調を強め、彼女に手を出すよう催促する。
数秒後、彼女は観念したようにゆっくり、手を出すと・・・・
あっ・・・・
「ちょっと、血が出てるじゃない!?」
まさしく、指先から血が出ている。
しかも、まだ、渇ききっていないらしく、ぎらぎらと赤く光っている。
少しでも傾けてしまえば、手まで流れ落ちてしまいそうだった。
それでも、彼女は痛いとは言わない。
ただ、私をすまなそうに見ているだけ。
痛いなら、言ってくれればいいのに――
隙間風が吹いているかのように心が痛い。
「あはは・・・・さっき、紙で切っちゃったんだ。大丈夫、すぐに止まるから、ね?」
なんて、苦笑しながら、切った手をヒラヒラと動かす。
大丈夫・・・・・・か。
そんなに激しく動かしたら、血が垂れてしまうのに――
私は彼女が大丈夫と言えば言うほど心配だった。
彼女の優しさが少しだけ切ない。
だから・・・・・
「た、妙ちゃん?」
私が黙ったままだったから、心配したのだろう。
彼女は心配そうに私を覗き込み、手を伸ばす。
見ると、伸ばされた手から今にも滴り落ちてしまいそうだった。
私はその手を乱暴に掴み、口に含む。
渇ききっていない鉄の香りが口の中に広がる。
赤い唾液を強引に飲み込み、彼女の指先にそっと舌を這わせる。
より赤みを帯びた舌先が必死で傷口を捜す。
捜し当てた傷口をなぞる度、彼女の体がピクリと動く。
上目使いで彼女を見ると頬を赤く染め、目は恥ずかしげに潤んでいる。
なんだか、可愛い・・・・・・
「んっ・・・・た、妙ちゃん・・・・・・き、汚いよ・・・・・」
彼女は私の舌に震え、途切れ途切れに言葉を紡ぎ出す。
それに対し私は何も言わず、彼女から出る赤い絵の具を拭い続ける。
舌先の動きを変えながら。
そして・・・・名残惜しそうに舌先で一回なぞった後、指先を解放してあげる。
解放された指先は私の唾液で湿っている。
見ると・・・血はもう、出ないみたいだった。
しわしわになった彼女の指先をクスリと笑う。
私の様子を見ながら、彼女は消え入りそうな声で私の名を呼ぶ。
正面から見た彼女の顔はリンゴのようにまだ、赤い。
「九ちゃん・・・・そんなに痛かった?」
「ちがっ・・・・・き、汚いから・・・舐めなくてもよかったのに・・・・・」
批難するように私を見る彼女の姿はやっぱり、可愛らしい。
一瞬、間を置き、諭すように私は言う。
少しだけ、真面目な顔で。
「九ちゃん、それは違うわ・・・・・」
「え?」
驚いたように彼女は目を丸くする。
そんな彼女の反応に満足した私は、すぐさま。
「九ちゃんより甘いものなんて無いのよ?」と彼女に言い放つ。
笑顔だけど、少しだけ意地悪そうに。
その言葉を聞いた瞬間、彼女はピタリと動きを止める。
「そ、それって・・・・・どういう・・・・た・・・・」
私はかがみ、彼女の唇を強引に奪う。
最後まで言わせてなんかやらない。
唇を離し、固まっている彼女に私は笑顔で言うのだった。
「ほら、やっぱり、九ちゃんは甘い」と。
Fin
よーわからんss。
感想とかいただけたら、嬉しいです・・・ww