もし、僕が男だったとしたら・・・・・・・・・・・

 

君は好きになってくれたのだろうか――

 

 

「ねぇ、九ちゃん」

 

 

 

 

彼女は楽しそうに僕に話しかける。

 

 

 

 

あれはこうだとかそこは何屋だとか。

 

 

 

 

何故、そんな事をしているのかというと・・今日は町案内を兼ねた久々のデート(だと僕は思っている)。

 

 

 

 

正直、彼女のペースについていくのは難しい。

 

 

 

 

だけども、彼女の笑顔を見るのは嬉しいし時折、立ち止まり僕を待っていてくれる。

 

 

 

 

その優しさに僕の心は簡単に溶け出してしまいそうになる。

 

 

 

 

ただの友達だって決めたあの日から、時間は確かに止まったはずなのに――

 

 

 

 

愛おしさで彼女に触れてしまいたくなる。

 

 

 

 

少しだけ胸が痛い――

 

 

 

 

そんな僕に彼女は眩しげな笑顔を向け、話しかけるのだった。

 

 

 

 

僕は曇らせていた顔を瞬時に笑顔にする。

 

 

 

 

この思いは永遠なのに、決して叶うことはない――

 

 

 

 

それでも・・・・・・・・

 

 

 

 

「ねぇ、九ちゃん。あそこの店、すんごく美味しいんだって!!今度、一緒に行ってみない?」

 

 

 

 

彼女の反応を見るにかなり、行きたいことが解る。

 

 

 

 

そういえば、前に行きたいって言っていたような気がする。

 

 

 

 

それなのに・・・僕は何も言わず、彼女をじっと見ているだけだった。

 

 

 

 

純粋に返事をし忘れただけなのに、否定の意味で彼女は捉えたらしい。

 

 

 

 

不安そうに声のトーンを落としながら、言葉を続ける。

 

 

 

 

「九ちゃん?もしかして、行きたくない・・とか・・・?」

 

 

 

 

「え?ち、違うよ・・・た、妙ちゃんとなら・・どこだって嬉しいし行ってもいいよ・・・・けど・・」

 

 

 

 

返事をするのを忘れたなんて、今更、言えないし本当は・・・・・・・・

 

 

 

 

彼女の誤解を解こうと必死で話し始める。

 

 

 

 

しかし、僕の疑いは晴れていないらしく、彼女は訝しげに僕を見ているのは確か。

 

 

 

 

「けど?」

 

 

 

 

う・・・・

 

 

 

 

言葉に詰まりそうになるくらい、追求されているのが声で解る。

 

 

 

 

僕は、詰まりかけそうになる言葉をゆっくり、吐き出す。

 

 

 

 

「た・・・ただ、傍にいてくれるだけで嬉しいから・・べ、別に・・・・・・

 

 

 

 

言い終え、はにかむように彼女を見ると、そこには顔を真っ赤にした彼女の姿が。

 

 

 

 

よく見ると、目が潤んでいる。

 

 

 

 

あれ?た、妙ちゃん?

 

 

 

 

僕がこんな事を言うなんて思いもしなかったらしく、彼女は恥ずかしそうに僕を見つめている。

 

 

 

 

そんな彼女の様子にあたふたしていると、心なしか僕の顔も熱い。

 

 

 

 

きっと、彼女の朱が僕に移ってしまったのだろう。

 

 

 

 

両手で頬を冷やしながら、ふと、僕は思うのだった。

 

 

 

 

たとえ、彼女が僕のモノにならないとしても・・・・君が笑うだけで、僕は幸せなんだって。

 

 

 

 

だから、ずっと僕のそばで笑っていて欲しい――

 

 

 

 

君が誰かを好きになるまで、僕が護るから――

 

 

Fin

初九妙ss

甘くないですね・・・普通に(汗)